私の本棚 国際問題

鄭 銀淑 日本が知らない北朝鮮の素顔
南北分断後50年。日本から見た北朝鮮は「拉致問題」「核開発」「不審船」など、脅威・迷惑・不可解など、悪いイメージばかりであるが、本書は北出身者の母を持つ韓国人女性の筆になる、素顔の北朝鮮像である。「脱北者」「拉北者」「失郷者」といった分断が生んだ民族の悲劇、イデオロギー対立の時代から、2000年の南北会談後の統一和解の流れとその屈折、ひとの交流・経済交流等から見える北朝鮮の姿など、まさに、われわれが知らない社会の実相を、わかりやすく教えてくれる。
03.02.25刊行
双葉社
03.08.09読了
テレビや新聞、あるいは、政治の動きだけを見ていると、北朝鮮という国をマイナスイメージだけで捉えるし、超大国アメリカの論理でいつのまにか、それがさらに増幅される.。本書は.朝鮮民族の統一への悲願、それを醒めた目で見ている韓国の若い世代、南北の学校制度、さらには軍人気質の違いなど、生身の社会が描かれ、金正日だけでない、「人民の北朝鮮」が見えてきた。
情報価値 ☆☆☆☆★



楊中美(著)、趙宏偉(監修) 胡錦濤 21世紀中国の支配者楊中美(著)、趙宏偉(監修)
胡錦濤とはいったい何者なのか。日中戦争中に茶葉商人の家に生まれた秀才はしだいに頭角を現し、四〇代で胡耀邦総書記の大抜擢を受ける。貴州省、チベット自治区書記として振るった辣腕をケ小平に見込まれ、最高指導者へとのぼりつめた。本書は、その生い立ちまで遡り、いまだ謎に包まれた新指導者の姿を明らかにする。さらに総書記就任後の最新分析も加え、二十一世紀の中国の行方を予測する。(カバー解説から)
目次
第1章 龍は龍を生み、鳳は鳳を生む
第2章 清華大学の好青年
第3章 大黄河のほとりで
第4章 中央政界の新人
第5章 貴州高原で腕を磨く
第6章 文官初の「チベット駐在大臣」
第7章 天は大任を下す
第8章 江沢民と胡錦濤
第9章 アメリカと渡り合う
補章1 胡錦濤の時代
補章2 胡錦濤の中国と日中関係
2003.03.25刊行
NHK出版
2003.08.21読了
21世紀初頭の中国のリーダーの人となりや、今後の政策方向が強く示唆されるだけでなく、毛沢東以降の中国の歴史が、わかりやすく理解できる。隣国であり、これから、世界に大きな影響力をもつであろう中国について、われわれはあまりにも無知であり、また、このままでは日本が中国の東アジア戦略・世界戦略に囲い込まれるか、孤立するという、この本の主張が、説得力をもって迫ってきた。
情報価値 ☆☆☆☆☆



チャールス・カプチャン(著)
 坪内淳(訳)
アメリカ時代の終わり(上)
内容
冷戦の終結は、アメリカの最終的勝利なのか。アメリカの単独優位という世界の現状は、いつまで続くのか。EUの勃興などによる力の分散と、アメリカ国内での単独行動主義の台頭によって、「漂流する大国」となったアメリカ。アメリカ外交政策の旗手が、急速に多極化する世界の行く末を問い、二一世紀に向けたグランド・ストラテジーを提唱する。話題の書の待望の翻訳。
目次
第1章 グランド・ストラテジーはなぜ必要か(過去を検証する
現在を検証する
未来を検証する)
第2章 アメリカの新しい世界地図(過去を検証する
新しい断層線
アメリカ一極時代の終わりと新しい世界地図)
第3章 グローバリゼーションと民主主義(過去を検証する
グローバリゼーション:万能薬か毒薬か
民主主義とナショナリズム)
第4章 ヨーロッパの勃興(過去を検証する
ヨーロッパの統合
ローマの再来)
2003.10.30刊行
NHKブックス
日本放送出版協会
2004,2,7読了
・いまや世界の唯一の超大国となっているアメリカだが、少なくとも20年先には、ヨーロッパの台頭、さらにはアジアの勃興によって、世界の地政学的地図は変化する。その変化の姿は冷戦時代への回帰でもなければ、ハンチントンの言う文明の衝突でもない、民主主義を成し遂げた国家間、あるいは、地域間の戦争によらない、あらたな力関係の再構築である。
・ローマ帝国の盛衰から、第一次、第二次大戦前後の歴史検証、冷戦の終結からヨーロッパ統合の流れをわかりやすく、ダイナミックに解き明かしており、現在を固定的に考えない世界的視野を開かせてくれる本である。
情報価値 ☆☆☆☆★



チャールス・カプチャン(著)
 坪内淳(訳)
アメリカ時代の終わり(下)
目次
第5章 アメリカの本質(建国時代とその遺産
第一次世界大戦と国際連盟の敗北
第二次世界大戦とアメリカの世界志向のはじまり)
第6章 世界からのアメリカの撤退(やる気のないアメリカ
一方的なアメリカ
テロリズムとアメリカの国際主義
新アメリカ国際主義の創造)
第7章 パックス・アメリカーナの後(過去を検証する
未来を検証する)
第8章 歴史の再生へ(過去を検証する
歴史的変遷の理論
デジタル時代のアメリカ
歴史的変化への準備)
2003,11,30刊行
NHKブックス
日本放送出版協会
2004,3,3読了
下記のような多くの含蓄ある事項が、歴史検証と対比させながら展開する。
・アメリカは国内的にも国民全体の政治への無関心すなわち外交への無関心や、移民の増大による他民族化が進んでおり、かっての国民国家としての求心力=国の力は衰退している。加えて世界的な「産業社会」から「デジタル社会」への革命的な社会変化がそれを加速している。
・EU、東アジアの勃興は相対的なアメリカの力を弱め、ついにはアメリカ時代の終わりとなる。アメリカは、こうした地政学的、国内的、デジタル的問題を克服していけば、次の時代にもつながる。
・ただ、東アジアの日本は、いまだ中国と過去の清算が出来ておらず、過去の呪縛にとらわれ充分な活動が出来ずにいる。ドイツがフランスとの関係をいち早く明解な謝罪によって、今のEUにつなげたのとは、対照的である。
情報価値 ☆☆☆☆☆




古森義久 日中再考
日本への憎しみと恨みを徹底的に教え込む教育。そしてビジネスの現場では、日本製品の模造品が公然と出回り、日本企業に対する当局"公認"の債務不履行が続く。日本人が中国に親しみを感じているのとは裏腹の中国の実態に果敢にメスを入れた話題作。
目次
第1部 似て非なる隣人(北京暮らしの逆説
 中国人は一般的に日本人が大嫌い
 国家間の「友好」とは ほか)
第2部 友好の虚実(日中交流担う民間窓口の不可思議
 中国側はあくまでも共産党主導
 中国の立場を代弁する日中友好七団体 ほか)
第3部 歴史の教え方(中国絶対正義が日中間をきしませる
 小学一年生に残虐な画像を焼きつける
 許されない「南京大虐殺」の否定 ほか)
2001,6,30刊行
産経新聞社
2004,7,28読了
自分も含めて日本人が中国に対して、親近感を抱いているのに、なぜ、中国(政府)は日本をあれほど目の敵にするのか?江沢民は日本に来て、なぜ、あのような言動をとったのか?胡錦涛と小泉首相がなぜ、親しくなれないのか?この本は、その深層をわかりやすく説き明かしてくれた。中国共産党が自らの一党独裁を正当化するための「抗日キャンペーン」の対象として「日本帝国主義」の侵略・残虐を、永久に糾弾しなければならないからなのだという、本書の立場は納得できる。靖国問題で、内政干渉的に振舞われても、なお、巨額のODA援助をしている今の日本政府の対応が、ますます歯がゆくなってくる。
情報価値 ☆☆☆☆☆



チャルマーズ・ジョンソン/著 村上和久/訳 アメリカ帝国の悲劇
内容
ブッシュ大統領は民主主義を破壊する独裁者になってしまったのか?沖縄をはじめ世界中に広がる軍事基地。その実態を綿密に描いて巨大帝国アメリカの姿をありありと浮かび上がらせる驚異のレポート。
目次
プロローグ アメリカ帝国のベールを剥ぐ
第1章 新旧の帝国主義
第2章 アメリカの軍国主義の根源
第3章 新たなるローマに向かって
第4章 アメリカ軍国主義の各組織
第5章 代理兵士と私設傭兵たち
第6章 基地の帝国
第7章 戦利品
第8章 イラク戦争
第9章 グローバル化にいったいなにが起きたのか?
第10章 アメリカ帝国の悲劇
文芸春秋
2004年9月15日刊行
2005、2,23読了
・「自由と民主主義を世界に広げることがアメリカの使命」と超大国一国主義に走るブッシュのアメリカだが、中味は帝国主義・軍国主義そのもので、外交は国防総省が牛耳り、議会の牽制も聞かず、自国民を欺き、軍産複合体を転換させるどころか、そこにどっぷり使った、世界支配と搾取がアメリカの本性だと説く。
・世界各地に752の軍事基地を展開し、そこは、治外法権で、アメリカの石油・宇宙・情報の権益を維持拡大させるために機能させ、戦争の終結など基地の役割が終っても、縮小・撤退することをしない。逆に2回のイラク戦争、アフガン戦争、コソボ紛争などを好期として、専制国家の中央政府と結託して新たな基地を作っている。このあと、イラン・北朝鮮への戦争を仕掛けている。「テロの撲滅」「人道支援」「自由と民主主義の普及」はその隠れ蓑に過ぎない。
・「グローバリズム」についての本書の追求はさらに鋭い。アメリカは、これまで高率の関税と「非関税障壁で国内市場を保護しながら、WTOとIMFを舞台に、第三世界や発展途上国にはこれらを認めず、どの国に対しても貿易や投資分野での市場開放を強要している。自国が発展の高みにたどり着いたあとは、ほかの者が後についてこられないように、自分が登ってきた梯子をはずしているのである。
・こうしてさらに貧困になる途上国では、アメリカへの憎悪とテロへの駆り立ての循環になる、つまりは、アメリカこそテロの元凶なのだ。
・「日米同盟」もこの文脈の中で捉えるべきで、このアメリカもいずれ4つの要因すなわち「たえまない戦争」「民主主義の崩壊」「真実の隠蔽」そして「財政破綻」から悲劇を露呈して、滅びることを、念頭においておくべきであろう。
・衝撃的、かつデータに裏づけられた印象深い本だった。
情報価値 ☆☆☆☆☆




大地の咆哮
元上海総領事が見た中国
杉本信行
2004年5月、在上海日本総領事館の館員が、中国側公安当局者による恫喝と脅迫に苦しめられ、自殺の道を選んだ事件は、日本人に大きな衝撃を与えた。そのときの総領事が著者である。;同年秋、一時帰国した著者は、自らの体に病巣があることを知る。医師から告げられた最終診断は末期がんであった。抗がん剤による激しい副作用と闘いながら、日本と中国の未来を見据えて書いたのが本書である。;「解説文」を執筆した岡本行夫氏(国際問題アドバイザー)はこう語る。「この本は現在の中国を分析するものとして世界中で書かれた多くの著作のうちでも屈指のものだと思う」「現役の外交官が、病気と闘う中で、自分の経験と考えを、脚色や誤魔化しなしに、そのまま我々に伝える決心をした」;著者はいう。「中国認識で大切なことは、机上の理論を排した現実に即して中国を理解することだ」と。その言葉どおり、日本人が知らない中国の実態を明らかにした大著。<出版案内による>

目次<抜粋:出版案内による>
●第一章 中国との出会い
●第五章 ココムと対中技術規制(ココム日本政府代表時代)
●第六章 台湾人の悲哀(台湾勤務時代)
●第七章 対中ODAに物申す(二度目の在中国大使館勤務)
●第九章 深刻な水不足問題
●第十章 搾取される農民
●第十一章 反日運動の背景
●第十二章 靖国神社参拝問題
●第十三章 中国経済の構造上の問題
●第十六章 中国の農村にCNNを(中国共産党と宗教)
●付録(1) 日中を隔てる五つの誤解と対処法
●付録(2) 日本と中国:「過去」をめぐる摩擦七つのポイント

PHP研究所
2006.7.7刊行
2006,9,13読了
 いままで読んだ中国に関する本のなかで、この本ほど中国の実情を語ったものはないように思われ、説得的だった。我々は「中国=共産党中国」という認識に終ってしまって、靖国に対する中国の執拗なまでの批難にいら立ち、中国きらいになったり、中国問題から意識的に目をそらしたり、さらには、いつまでもこの問題を解決できずにいる日本政府関係者に不満を感じたりしている。しかし、この本は、中国(共産党中国にとどまらない中国の歴史と現実)および中国と日本の関係や、中国共産党指導者の置かれた立場、そして、13億の中国の人々の現実の姿を、真正面から見つめて問題点を提示していて、「ほんとうの中国」を、しっかりとわからせてくれる。
 それにしても、国際社会にその存在を増大させ、目覚しい経済成長を遂げている中国の内実が、目を蓋う惨状、とくに、年金や健康保険の保護もまったくなく差別され搾取されている農民、負け組となっている都市貧民、その対極にある共産党・国・地方に到るまでの幹部や役人の汚職・不正、水不足や環境汚染、底知れない不良債権などなどが次々と指摘され、隣国日本にとっても、北朝鮮に劣らぬリスク要因であり、今さらながら物騒な国だと感じさせられた。
 記述はわかりやすく、理解しやすい。著者はこの本が出たあと、2006年8月になくなったとの事であるが、その絶筆にあらためて敬意を表するとともに、心からのご冥福を祈りたい。
情報価値 ☆☆☆☆☆